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康彦君のお話、前回からの続きです。
6年生になった康彦君ある日頭痛を理由に一日欠席しました。
翌日母親からのお手紙をもって登校しました。 それには、
先生、実は康彦の塾から康彦が塾に行っていないという電話があり 問いただすと、
さぼってゲームセンターに入り浸っていたようなのです。
自分の貯金通帳からかなりのお金も引き出していたようです。
私たちがなにか言いますと、
「ぼくはもうダメ。お父さんや、お母さんの言うようにはなれないよ。
ああ、どこか遠くへ行ってしまいたい。」とか
「一流大学だたって悪いことする人、いっぱいいるじゃないか。
ぼく、お金持ちになんかならなくたっていい。ふつうでいいんだ。」
などと繰り返し怒鳴ったりしています。
家庭教師の先生には、「来るな!」と言うし、
塾へは「行かない!」と言うし、
私も主人も困り果てています。
先生なにか話してやっていただけないでしょうか?とありました。
先生もふさぎこんでいる康彦君を見て気にかかっていました。
康彦君は理解力もあり、勉強も大事、
でも、一流大学を目指すことはあっても、親とは違う人格であること、
困難にぶつかったときそれを乗り越える
康彦君にふさわしい納得のさせ方のお話をしてやれそうに思いました。
「君は問題にぶつかっているね。」
「・・・」
「君が言うように一流大学を出た人の中にも、汚職をしたり、
人をだましたり、悪どい金もうけをしたり、
その頭の良さを悪いことに使う人もいるよね。
確かにそれはどうだけれど、その頭のよさを
自分のためだけじゃなく、社会のため、
つまりたくさんの人たちの幸せのために生かしていこうという人たちもたくさんいる。
君が、どちらの生き方を選ぶかは君しだいだ。」
「・・・・・・・・」
「人は誰でも、自分という船の人生の船長さんなんだよ。
どちらにどうカジをとって進んでいくかー。人の話をよく聞いた上で、
最後に方向を決めるのは、
自分に責任のとれる自分だけなんだよ。
勉強をして損をすることはない。
君はこれまで人一倍勉強してきた。
自分を精一杯生かすことはどうすることか、
どのように自分の船のカジをとるのがよいのか、
そのことをよく考えてみてはどうかな。
先生はゲームセンターのことには一切触れませんでした。
話し終わったとき遠い目をいていた康彦くんは
「先生、どうもありがとう」といって、資料室を出て行きました。
その日の教室である男の子が、いたずらっぽく、
「先生康彦君と資料室で何話していたの?秘密のこと?」
と聞いてきました。
「じつはね、康彦君が私立やめようというもんだから・・・」
「えー。なんでー。」
「今まで一生けん命やってきたじゃないか。もったいないー。」
「やるだけのこと、やんなきゃもったいなよー。」と
教室はそうぜんとなりました。すると一人の子が
「僕に提案があります。この間みんなで歌った”若者たち”を
康彦くんのために歌いたいと思います。というと、
たちまち大合唱になりました。
君の行く道は希望へと続く
空にまた陽がのぼるとき
若者ははまた歩き始める
空にまた陽がのぼるとき
若者ははまた歩き始める
2番3番になると、康彦君は机にうつぶし、声をおしころして
泣いていました。
「頑張れよな。」
「頑張って!」
3日後康彦君は作文をかきました。
ぼくはぼくという船の船長だ
ぼくという船の船長はぼくしかいない
だから、自分がよしと思った海のみちを
自分の心で一生けんめい操縦していく。
広い広い海を一生けんめい操縦していく
あめにあったりあらしにあったりしながらも一生けんめい進んでいく
大人が思うほど小学生は子供ではないですね。
あらためて、ひとは一人では生きていけないと 思いました。
人を本気で説得したいときは責めてはいけないということも。
勉強になりました。
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